
長年メディアの現場でメイクアップアーティストとして携わる一方、近年は百貨店のポップアップを通じて、多くの一般のお客さまの眉に直接触れ、対話を重ねてきました。その中で、私自身があらためて実感しているのが、今の「リアルな眉事情」です。
特に40代以上の女性は、安室奈美恵さんに代表される細眉ブームの影響を強く受けた世代。細いアーチ眉に憧れ、眉を短くカットし、剃り、抜いてきた結果、眉尻や眉下の毛が生えなくなり、角度の強いきつい印象の眉になってしまっているケースが非常に多いのです。
それは過去のトレンドの名残であり、現在主流とされる「自然な太さがあり、角度のきつすぎない眉」とのギャップに悩む、いわゆる“眉難民”の方がいかに多いかを日々痛感しています。

また、後悔の声が多いのがアートメイクです。地肌に直接、色を入れる施術は立体感が出にくく、不自然になりやすいという特性があります。眉は単なる顔のパーツではなく、その人の顔立ちの捉え方や美意識、価値観までもが如実に表れる部分。新しいアイテムを使えば新しい眉になるわけでも、トレンドアイテムを使えばトレンド眉になるわけでもありません。
洗練された眉を手に入れるためには、描き方以前に「眉に対する考え方そのもの」を見直すことが欠かせないのです。
大人世代にとって、流行をそのままなぞるメイクはリスクを伴います。たとえば、自身の肌色よりも数段明るいファンデーションが流行しているからといって取り入れた結果、顔から浮き、かえって悪目立ちしてしまうのであれば、そこにトレンドを追う意味はあるでしょうか。
シミを隠そうとして厚塗りしたコンシーラーが、逆にその部分だけを強調してしまうのと同じです。
年齢を重ねることを受け入れたうえで、若作りや「隠すための厚塗り」ではなく、大人だからこそ持つ魅力を引き出すメイクを目指してほしい。
そのためには、まず自分自身の軸を持ち、トレンドを取捨選択する力こそが何より重要なのではないでしょうか。